シュリスペイロフ『turtle』(2014)
シュリスペイロフは1999年に札幌にて結成されたロックバンド。メンバーは宮本英一(Vo・G)、野口寛喜(Ba)、ブチョー(Dr)、そして2016年に加入した澁谷悠希(G)の4名によって構成される。(澁谷は正式加入以前も多くの音源に参加しており、レギュラーのサポートメンバーだった。)
『turtle』は山中さわお主宰の「DELICIOUS LABEL」移籍後初となるミニアルバムで、結成以来札幌を拠点に活動し、結成から5年間はスタジオ練習のみを行っていた(!)という彼らが結成15年にして東京に進出したという節目にリリースされた音源でもある。
さっそく収録曲をチェックしてみよう。
1.下着と日々
ゆったりとしたテンポ感と歯切れのいいギターリフが心地よい曲。サビのメロディーもいいし、終盤のギターソロもカッコいい。というか曲名がすごく好みだ。知らないバンドはまず曲名をチェックすることが多いのだけれども、この言葉の組み合わせは素晴らしいと思う。聴きたくなってしまう。
「僕らに用意された日常 続いていくとうたがわない 僕らの永遠は短い」
2.朝ごはん
シンプルなドラムから始まるミドルテンポの静かな曲。とても穏やかな空気感が曲全体を通して続く。曲全体の骨格がしっかりしているからシンプルな演奏・構成ながらもついつい何度も聴いてしまう。裏メロのギターがいい仕事をしている。
「朝ごはん食べたくて 冷蔵庫を開けた途端 ちゃんと生きてるような そんな気分になったんだ」
3.小説
穏やかなギターのイントロから始まる曲。けれども、サビの起爆力はオルタナティブさを感じさせられる。シュリスペイロフの良さはグッドメロディーとオルタナ感溢れる演奏が同居しているところだと思っているので、存分にその良さを感じられる曲だ。歌詞のうら寂しさもよい。
「大事な 言葉は 薄闇の中 もう少しで さわれそう」
4.檸檬
この音源の中で一番スリリングで緊張感がある曲。プログレっぽくもありつつ、しっかりとオルタナ。ひんやりとして切れ味の鋭い質感がたまらない。特にギター。そして、曲中に入る口笛がさらにその空気感をドライにさせている。かっこいい口笛の使い方だ。曲展開がとても好みだ。
「悲しいことも楽しいことも 無くなんない」
5.どうでもいい
トチ狂ったようなキワキワのギターの絡み(褒め言葉)がかっこいい曲。もし、これ以上ハチャメチャなギターが鳴るイントロがあったら教えてほしい。コードもおそらくすごく変なコードばっかり押さえていて、すごい鳴り方をしている。しかし、曲全体には爽快感を感じ、3分22秒を独特のフォームで駆けぬいている感覚がある。不思議な曲だ。
「消えそうになりながら突っ立って 目を凝らしているんだ 今を見せて欲しい」
シュリスペイロフは昔から気になっていたバンドだったが、音源のほとんどが廃盤になってしまったため(わたしは根っからのCD派)、なかなか聴きづらいバンドだった。結局聴きはじめたのは大学に進学した2014年から。当時はこの『turtle』しか入手できるCDがなく、あとは札幌市内の中古屋を回りまくって無理やり入手した。(それでもまだ揃わない)今現在は、各サブスクでもほとんどの音源を聴くことができる。この文章を読んで少しでも引っかかったらぜひ聴いてみてほしい。